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『ロレット』<ヴィニー [あらすじ]

『ロレット』Laurette<Alfred de Vigny
(まだ若い軍人の)「私」はナポレオンの帝政時代に雨の降る日、馬の蹄の不具合のため連帯から少し遅れて一人リール(フランス北東部の町)へ向けて泥濘の中を歩いていた。前方に泥沼の中をこれも一人ロバを引いて歩いている軍人を見つけ追いついた。それは肩章から少佐だとわかった。ワインを勧められて少佐と歩いているうちに、ロバの曳いている荷物の中に女がいることを教えられる。
※ この出会った少佐が自分の過去を語るという形式で物語が進行する。以下は50がらみのこの少佐が語る物語である。

 自分はブレスト(ブルターニュの先端にあるフランスの軍港)生まれで、海が好きで商船に密航者として乗り込み、水夫となった。その後出世して艦長にまでなった。1797年ブリュメール28日にカイエンヌ(南米仏領ギアナの首都)へ向けて出航しようとしていたとき、囚人を一人乗せてゆくようにと執政政府から依頼されてその囚人を乗せた。同時に赤い封印で厳重に封をされた手紙を託された。ただしこの手紙は赤道あたりへゆくまでは開封してはいけないという条件がついていた。
 出航してしばらくして、自分の部屋に19歳という若い男がやはり若い妻をつれて入って来た。そしてすぐに我々は友達になった。二人は華やいだ可愛いカップルだった。自分の子どものように思えるくらいだった
 ところが二人は時々赤い封印をされた手紙のことが気になるようだった。
 二人は二羽の鳩のように仲睦ましく艦内で過ごしていた。しかし北緯1度、西経27まできたとき赤い封印をした手紙を開けなければならなかった。そこには執政政府がしたためた命令書があった。中味は「囚人のこの男を銃殺刑に処せ」というものであった。艦長の私は驚愕したが、手紙の内容を19歳の男に伝えた。だが19歳のこの男はそのことを冷静に受け止め、妻のロレットの後事を「私」に依頼するほどだった。
 刑を執行するのに艦長は夜をまった。そして部下にボートを下ろし、女を銃声の聞こえないところまで連れていけと命令した。

 そこまで話すと少佐の声は次第に薄れ、不明瞭になった。だが少佐は再び話し始めた。
 処刑を実行するのに艦首が選ばれた。ところが、ロレットを乗せたボートは闇の中を艦首の方へ来たのだ。それで、彼女は夫が処刑されて海に落ちる場面をみてしまった。
 その子は気がふれてしまった。自分はフランスへ帰国したとき、海が嫌になって陸軍へ配置換えをねがった。女の家族のもとへ行ったが、家族は気のふれた女を引き取ろうとはしなかった。それで「私」は彼女を手元におくことしたのだ。
 
話し終えて少佐はロバを止め荷車の中を見せてくれた。中には目だけになったような女がいて、ドミノゲームをやっている狂女を私は見た。彼女は二本の指にダイヤモンドの指輪をしていた。
それは、婚約と結婚の指輪だった。少佐は、それを手放すことなく年金でいままで暮らしてきたと話した。
 ロレットはあいかわずドミノをやっている。雨も降り続いていたがが、少佐をうながして道を前進することにした。進みながら彼は話し続けた。こんな状態でもう18年もなるということだった。
 目的のベチュウーンに着いたとき彼らとはぐれ、それきりになってしまった。
 その後の14年の軍隊生活でこれほど無頓着な自己放棄のできる人間にはであわなかった。
 その後偶然、ある老大尉からかれらのその後を知った。それによると少佐はワテルローの戦いで戦死し、連れていた狂女はアミアンの病院に収容されたが3日後に死んだそうだ。

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