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『水車小屋の攻撃』<ゾラ [あらすじ]

『水車小屋の攻撃』L’Attaque du Moulin
                            一章
1877年『居酒屋』の大成功後、ゾラがパリ近郊のメダンに別荘を買い、彼を師と仰ぐ若いグループがそこに集まった。1880年ゾラの発案で「メダンの夕べ」Les Soirés de Mèdanというタイトルで文集が出された。その中で後世に残る秀作はモーパッサンの『脂肪の塊』と言われているが、ゾラが出品した『水車小屋の攻撃』も小品ながらキラリとした輝きもった短編である。

 時代は普仏戦争の頃。ロレーヌ地方の寒村が舞台。
メルリエ父ツァンの水車小屋は、その晩お祭り騒ぎだった。中庭に3つのテーブルが置かれ会食者を待っていた。みんなは当日メルリエ父ツァンの娘のフランソワーズと、他所から流れもののようにふらっとやって来たが、なかなかイケメのドミニックとの婚約が執り行われようとしていた。
 メルリエ父ツァンの水車小屋は楽しげだった。それはロクリューズ村の真ん中にあり、大きな川の曲がり角にあった。村には一本の道しかなく、その両側にあばら家が立ち並んでいた。川の曲がり角のところにモレル川に沿って大きな木々が鬱蒼としており、すばらしい木陰をつくる谷間となっていた。ロレーヌ地方にはこれほど素晴らしい片隅はなかった。
 20年このかたメルリエ父ツァンはロクリューズ村の村長だった。マドレーヌ・ギヤールと結婚したとき、彼女は持参金として水車小屋を持ってきたのだ。メルリエ父ツァンには二本の腕しかなかった。妻は死んでしまったがメルリエ父ツァンはよく働き、水車小屋を守った。いまでは大変年をとり、決して笑わなかったが内面は陽気だった。
 娘のフランソワーズは18歳になっていたが、美しいとは言えなかったが、その後、年とともにぽっちゃりとし鶉のようになった。いつも笑うのはそれは他人のためだった。
 当然近くの若者たちは彼女に言い寄った。けれどもフランソワーズはスキャンダラスな結婚を選んでいた。相手はモレル川の反対側に住んでいる背の高いドミニックという青年だった。彼はロクリューズ村のものではなく、叔父の財産を受け取るためにベルギーからやってきた若者だった。財産の処理が済んだら邦へ帰ると言っていた。
 しかしこの邦が気に入ったのか動こうとしなかった。畑を耕したり、漁をしたり、狩をして暮らしていた。みんなは密猟者扱いした。要するに彼は怠け者だった。草の上で寝転がったりしていたからである。まともな青年とは見えなかった。狼と取引して暮らしているのではと言った噂だった。けれども村の娘たちは彼を弁護した。彼はいろんな点でイケメンだったからである。フランソワーズは、彼としか結婚しないとメルリエ父ツァンに宣言した。
 メルリエ父ツァンがどんな打撃を受けたか想像するにあまりある。メルリエ父ツァンを苦しめたのは、あの密猟者のごろつきがどうして娘を誘惑したかということを知ることだった。ドミニックは水車小屋へは来ていなかたった。二人はモレル川越しにみつめ愛をはぐくんだのだ。
 メルリエ父ツァンはある朝ドミニックに会いに行った。3時間ほど話しあったあとでメルリエ父ツァンはドミニックを息子扱いしていた。ドミニックが純朴な青年であることを知ったのだった。村の女たちは悪口を言った。しかし、メルリエ父ツァンは言わせるままにしていた。自分も結婚したときには。文無しの若造だったのだ。そのうちドミニックは水車小屋で熱心に働くようになった。
 ある日中庭にテーブルを並べて、メルリエ父ツァンはフランソワーズの結婚のことを宣言した。村人たちは大いに飲み、笑った。若い二人は幸せそうだった。ある老農夫が、近づいている戦争のことについて話した。皇帝(ナポレオン三世)がプロシアに宣戦布告したのだ。
                              二章
 一ヵ月後、ロクリューズ村は恐怖の中にいた。プロシア兵が皇帝を倒しロクリューズ村へ迫っていたのだ。村人たちは兵隊たちの足音で目覚めた。しかし、それはフランスの分遣隊だった。水車小屋に駐留するという。隊長は水車小屋のあちこちに兵隊を配置した。村人たちは戦うのかと聴いた。隊長はそうだと言った。
 メルリエ父ツァンは若い二人に結婚は明日に延ばすといった。
 お互いの姿が見えないまま銃撃戦がはじまった。フランソワーズとドミニックが一人の少年兵に目を留めたが、その少年兵は撃たれた。彼はこの戦いの最初の犠牲者だった。銃撃戦がまたあった。ガニーの森から出てきた二人のプロシア兵が倒れて死んだ。
 しばらく撃ち合いが続いた。水車小屋は包囲され、穴だらけになった。フランスの士官は4時間はもたないだろうと言った。
 水車小屋の中では2人が死に、3人目が負傷した。フランソワーズは恐ろしくなった。部屋は破片で一杯になった。フランソワーズは額に負傷した。それを見てドミニックは鉄砲を撃ちまくった。フランス兵たちは水車小屋から退却した。隊長はメルリエ父ツァンにまた来るからと言って出て行った。
 ドミニックはフランス兵たちが出ていったあとも、フランソワーズを守るために撃ち続けた。そこへプロシア兵たちが入ってきてドミニックは取り押さえられた。フランソワーズは懇願したが、プロシア兵の隊長は、ドミニックに2時間後に銃殺だと宣言した。

                           三章
 ドミニックは捕らえられた。それはプロシアの規則だったが、全フランス人が正規の軍隊に入っているわけではないが、武器を執ったものは、すべて銃殺されるというのであった。
 プロシア士官は「2時間後には銃殺だ」と言った。ドミニックは隣の部屋へ移された。 夜になった。12人の兵士が銃を肩にして出てきた。フランソワーズは震えた。
 士官が出てきて、ドミニックに「朝まで猶予を与えてやる」と言った。メルリエ父ツァンはフランソワーズを部屋に連れて行き、娘をそこに閉じ込めた。フランソワーズの部屋の窓の下に鉄のはしごがあった。
 フランソワーズは梯子を使って降り、ドミニックに逃げるよう勧めに来たという。 フランソワーズは逃げてくれと頼む。フランソワーズが相変わらず懇願するので、ドミニックは承知した。ドミニックはフランソワーズが部屋へ帰るのを見届けて逃げた。
                            四章
 夜明けにわめくような声が水車小屋に響いた。フランソワーズは中庭におり、プロシア兵が死んでいるのを見て震えた。
 プロシア兵の死体を前にして(プロシアの)士官がメルリエ父ツァンを呼び、殺人犯を探す協力をしてくれという。殺された歩哨の喉にナイフが刺さっていた。士官は空になったドミニックの部屋を見て事の次第を全て理解した。
 士官は「君達は共犯者だ」だと言い、怒りの頂点で「あ奴を我々に引き渡せ」という。「さもなければ君達はあ奴の代わりに銃殺だ」。銃殺隊が揃った。メルリエ父ツァンは「もし一人誰かを必要とするなら私をやれ」という。それを聴いてフランソワーズは「ドミニックを逃がしたのは私だ、私が有罪だ」と事実を告白する。メルリエ父ツァンは「嘘だ」というが、フランソワーズはそれを否定する。フランソワーズの懇願に対して士官は「ドミニックを連れてきたら、お父さんを解放しよう」とフランソワーズにいう。フランソワーズは「どちらとも選べない」という。士官は「2時間の猶予を与えるから、ドミニックを探して来い」という。
 メルリエ父ツァンはドミニックが幽閉されていた部屋へ連れて行かれた。フランソワーズは中庭でじっとしていた。フランソワーズはどうしていいか解らなかったが、ドミニックに会いたいので、ふらりと庭を出た。
 フランソワーズは水車小屋の水門のところまで降りた。そこに多量の血痕のあとを見た。それに従って森のはずれまで来た。
 夢遊病者のように彼女は森の中を彷徨い歩いた。以前ドミニックと行った穴の中へも行ったが、そこは空だった。彼女はドミニックを銃殺刑にするために探しているのか自問する。でも時間が過ぎると父が殺される。彼女はジレンマの中にいる。彼女は気が狂いそうだった。突然ドミニックのフランソワーズを呼ぶ声が聞こえた。ドミニックに会えたのだ。2時間がもう過ぎようとしていた。フランソワーズはドミニックと別れるとき、「私たちがあなたを必要とするなら、部屋に行って、ハンカチを振るわ」とフランソワーズは言う。
 フランソワーズは水車小屋のところへ帰ってきた。フランソワーズは涙をながし、跪いた。フランス軍がくるまで時間寺稼ぎをしたかった。
 プロシア兵たちがメルリエ父ツァンを銃殺するために準備をしている。フランソワーズはドミニックと一緒に死にたかった。部屋へ登った。その時ドミニックが現れた。プロシア兵は喜びの声をあげた。ドミニックは途中でボンタン爺さんに事情を聞いたのだという。
                             五章
 (プロシアの)士官はドミニックを部屋に閉じ込めていることで満足していた。フランソワーズは中庭にいてフランス(兵士)の来るのを待っていた。プロシア兵たちは出掛ける準備をしていた。士官はドミニックと部屋に閉じこもったままである。
 ドミニックは死んでもいいのだというが、士官はモントルドンへの道を教えたら命を助けてやってもいいという。そうこうするうち雷がなる音と同時に「フランス兵だ。フランス兵だ」という叫びが起こる。実際それはフランスの兵士たちだった。プロシア兵たちは右往左往している。だがまだ砲撃は始まっていない。
 士官は銃殺隊にドミニックを処刑する命令を下す。ドミニックは地面に倒れた。フランソワーズは呆然とするが、士官は人質としてメルリエ父ツァンを捕獲する。
 今は水車小屋を守っているのはプロシア兵たちで、攻めているのはフランス兵たちだ。激しい砲撃がロクリューズ村の大通りを一掃した。戦闘は長くは続かなかった。水車小屋は見る影もなくなり、残骸はモレル川に流れている。フランソワーズの部屋はカーテンが引かれたままだ。フランス兵たちの攻撃で森もかなり痛んだ。メルリエ父ツァンも流れ弾で死んだ。フランソワーズはドミニックとメルリエ父ツァンの死体のあいだで呆然としている。そのそばをフランスの士官が「勝利だ、勝利だ」と叫んで通って行く。

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