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『ピエールとリュス』<ロマン・ロラン [あらすじ]

『ピエールとリュス』Pierre et Luce あらすじ

 第一次戦争下の雪に覆われ悪夢のような雰囲気のパリ。まだ18歳のピエールはメトロの中に呑みこまれようとしていた。 戦争は4年続いていた。ピエールのような少年は嫌悪と恐怖を感じていた。国家が彼の肉体を必要としていた。
 地下鉄の中でピエールには一人の少女が目にとまった。まだ彼女は彼の存在に気づいていなかった。次の駅では混雑があり、天井の上で爆発があった。一人の男が階段をころがり落ちた。恐怖の叫び声の中で、触れた手を握った。それはこの彼女のものだった。彼女は手を引っ込めなかった。二つ目の駅で彼女は彼を見ることなく、去っていった。彼は外に出た。そこには恐怖に怯えた町があった。ピエールはクリュニー広場の近くで、両親のところで住んでいた。ブルジョアの家庭だった。
 ピエールの両親は良きキリスト教徒であると同時に共和主義者であった。マダムオービエは戦争に対して反対であった。
 ピエールの苦悩を理解しているのは、兄であり、ピエールはその兄を愛していた。 ピエールは書類や本で一杯の部屋にいた。上の階では、居なくなった息子を待って、気の狂ったように徘徊している老人がいる。
 ピエールの知性はしぼんでいたが、本や思想に身を入れていた。人生に対する疑問はあったが、「人生には意味がある・・・」。
 恋いに恋する思春期に、貪欲だが不安定な心が次々と彼(ピエール)の心を捕らえる。
 ピエールはまだ恋いを知らないが、死の匂いのする中で恋いが生まれた。
 ピエールはセーヌの河岸に沿ってぼんやりとブキニストの本を見ている。彼は待っていた少女の姿をそこに見た。彼女は脇にデッサンのボール紙を抱えて階段を降りてきた。二人の目が会ったが、彼女はすぐに去って行った。リュクサンブール公園を歩いている時また彼女に出会った。今度は彼女に話しかけた。「ここに座らないかって」。
 公園のベンチに座りお互いが見知らぬ少年と少女は話し合う。お互いに名前を言う。少女はへぼ画家でリュスだという。また会うことを約束してリュスはメトロに乗って去ってゆく。二人はそれぞれ幸福な気分だ。
また二人は会った。リュスは、母が軍需工場で働いているという。ピエールはちょっと非難めいたことをいう。でも「生活のためには仕方がないでしょう」とリュスはいう。二人はだんだん打ち解けて、キスをした。
 冬の公園。だが二人の心にあるものを消すことはできない。
 彼らはある時教会に入った。リュスが「徴兵されるの?」と聴く。ピエールは「6ヶ月後に」という。電車の停留所のところに着いた。また会う約束をした。リュスは「今度会うときは写真を持って来てね」という。「写真なしでは、あなたのポ^トレートは描けないからだ」と。
 ピエールは(リュスの)家を探して町中を歩いて行く。それらしき家を探しあてピエールは中へ入って行く。リュスが出てきて迎える。リュスの部屋にはみすばらしい画架しかない。ぎこちない感じだが、リュスが頼んだ写真をピエールはリュスに渡す。これで雰囲気が和らいだ感じになる。
 リュスはポートレートを描き始める。ピエールは話すことができなくて、リュスだけが話している。遠くで大砲の音が聞こえる。そのため死んで行くひとがあるのだ。
 二人はリュスがいれたショコラを飲む。ピエールがリュスに「母とはうまくいっているのかい」と尋ねる。リュスは「そうだ」というが同時に「すべてが変わった」とも言う。すべてのことは昔のようではない。「戦争このかたよ。女は愛人をもち、男たちは女を忘れる。親子の間も同じことよ」。「可愛そうな母はまだ若いが、幸福じゃない」と。
 夜になった。ピエールは立ち上がる。リュスも引き止めない。二人は「さようなら」という。ピエールは振り返ってみた。リュスのシルエットが見えた。二人はガラス越しにキスをする。
 ドイツの大攻撃が始まっていた。それはパリの街を揺るがしていた。人々はカーヴに身を潜めていた。そんな午後ピエールとリュスはシャヴィルの森へ行くことを決めていた。森に到着したが彼らの足はふやけ、彼らはよろめいた。彼らは土手に登り、雑木林の中へ入った。ピエールはリュスの膝に頭をのせ、リュスは彼を愛撫した。
ピエールは彼女を腕に抱きしめようとしたが、リュスは拒否した。
 パリに帰って彼らは毎日のように会っていた。二人は将来の住まいのことを夢見ていた。しかしそれは夢でしかなかった。
 ある日二人はノートルーダム寺院へいった。彼らは側廊の一つに座った。二人は結ばれることを誓う。手を取り合って。その時突然巨大な建物が崩れ落ちた。

 「戦争反対」の理念が先行して、登場人物の命が吹き込まれていないような感じだ。いかにもロマン・ロランらしい作品と言えるかもしれない。

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