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『ジュール伯父』<モーパッサン [あらすじ]

『ジュール伯父』あらすじ<モーパッサン
 友人のジョゼフが物乞いの老人に百スーやったことを「僕」が驚いたのを見て、ジョゼフが身の上を語るという枠組みで物語が進められる。

 「僕」の家はル・アーブル出だが貧しい家庭だった。お袋は所帯の苦しいのを辛がり、絶えず父親を批判していた。倹約できるものはすべて節約した。
 ボタンを失くしたり、ズボンを裂いたりしたらひどく叱られたものだ。ところが日曜日にはお袋が盛装し父親の腕にすがって波止場にでかける習慣があった。僕たちは見せびらかすように波止場を練り歩くのが常だった。そこには適齢期の姉たちのデモストレーションの意味もあったようだ。波止場に大きな船が来るたびに「あの船にジュールが乗っていたら、たまげるだろうな」というのが父親の口癖だった。
 ジュール伯父というのは父親の兄だったが、あまり評判のよくない人のようだった。ところがいまでは僕たちの唯一の希望だった。
 どうやら伯父は身持ちが悪く家の金を使いこんでいたようだ。金持ちならともかく貧乏人の家ではそんな人間は「悪者であり、無頼漢であり、やくざということになる」のだ。
 ジュール伯父は自分の分け前を一厘まで使いこんだので、その頃皆がそうしたように、ル・アーブルからニューヨーク行きの貿易船に伯父を乗せアメリカへ送りだしたのだ。
 一度伯父から手紙があり、商売で身をたて迷惑をかけた分のつぐないができるだろうといった内容だった。この手紙は僕たちに深い感動を与えた。ジュールは俄かに「立派な人間、勇敢な男」になった。
 2年たって二度目の手紙が来た。その内容は、伯父は成功し順調にやっている。4・5年はかかるだろうが、ル・アーブルへ帰って幸せに暮らそう、というような内容だった。この手紙は家中の福音書になった。
 ところが10年間伯父からの手紙はなかった。僕たち、父親もお袋も皆希望が膨らんで待ちくたびれるほどだった。伯父は「一旗挙げて帰ってくる」そう信じていた両親はいろいろと計画を立てていた。田舎に一軒屋を持つこともその計画の中に入っていた。やっと下の姉に求婚者が現れた。伯父の手紙をみての求婚者だったようだ。式が済むと一家揃ってジェルセー行きの小旅行をすることまで決められた。このジェルセーというのは船で行くイギリス領だった。外国へ行けるのだ。
 僕たちは出発した。幸福な得意な気持ちで去り行く浜辺を眺めていた。親爺はフロックコートを着ていた。船上で牡蠣を食べている上流階級の人を見て親爺は「どうだいお前たちにも牡蠣をごちそうしてやろうか」と言った。二人の姉はそれに応じたが、お袋は食べないと言い、僕にも食べないようにうながした。親爺は二人の娘と婿を連れてボロをまとった水夫の方へもたいぶって歩いて行った。
 親爺が急にそわそわした様子になった。真っ青になってお袋につぶやいた。
「変なんだよ、あの牡蠣をむいている男がジュール兄とそっくりなんだ」。親爺は「どうしたらいいのだろう」とお袋に言う。お袋は「子どもたちを遠ざけることよ」という。親爺は気の毒なほどいびれて呟いた。「なんという始末だろう」と。
 お袋は突然気ちがいのように怒りだして、「ジョゼフ(僕のこと)に金をやって牡蠣代を払いにやりなさい。そしてあの男に気づかれないように遠くに行きましょう」という。
 「爺さんいくらですか」。「2フラン50です」。僕は3フラン銀貨をだして釣銭を受け取った。老人は貧素な見出しなみだった。僕は「これが僕の伯父さんなんだ」と心の中で思いチップとして釣銭を渡した。男は喜んで礼を言った。「坊ちゃん、神様のお恵みがありますように」。
 施しものをうけるその言葉使いに彼があちらでも乞食をしていたのだと思った。釣銭を親に返したとき、お袋が言った。「3フランもしたの!」。僕はチップとして50サンチームやったことを言った。「アホめ!あんな男に50サンチームもやる必要なんかないのに」とお袋が言った。婿のいることを知らせる親爺の目くばせにお袋は黙った。
 それから誰も口をきかなかった。僕たちの正面、水平線上にジェルシー島が見えた。ジェルシー島に着いたとき、伯父さんに会って優しい声をかけたい気持ちに僕はなったが、もう牡蠣のところには誰もいなかった。あの気の毒は船倉の寝部屋に行ったに違いない。それから僕たちはあの人に会わないように、サン・マロ行きの船に乗った。それ以来僕は親爺の兄貴に会ったことがない。これが時々浮浪人に会ったとき、ぼくが100スーをめぐんでやる理由なんだ。

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